西ドイツ外交とエーゴン・バール

[著者]アンドレアス・フォークトマイヤー
[訳者]岡田浩平

西ドイツ外交の歴史でもっとも興味深いのは「東方外交」であろう。建国以来西側ばかりに目を向けていたものを、ソビエト初め東欧諸国との関係改善に力を入れて懸案を解決しようと大きくカジを切った。これが、西ドイツ外交のもっとも躍動した時代を築き、世界の注目を集め、悲願のドイツ統一への道を切り拓いていったのである。その主役にはヴィリー・ブラントの名が挙げられるが、構想上・実践上影の主役を務めたのはエーゴン・バールであった。西ドイツ外交に果たしたバールの考えを中心にすえ、ドイツ統一前後までの外交の舞台裏を詳述する。

定価=本体 6,000円+税
2014年8月15日A5判上製/552頁/ISBN978-4-88303-360-7


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[目次]

第1章 まえがき 11
  第1節 現在の関心、対象と問題設定 11
  第2節 研究の現況と方法 16
  第3節 基礎的となる資料とその格付け 22
第2章 矛盾にみちた青少年時代――一九四五年までの人生歴スケッチ 25
第3章 エーゴン・バール――冷戦の戦士? 戦争の終結から壁の建設まで 33
  第1節 戦後時代――バールの「ゼロ時」? 33
  第2節 ヤーコプ・カイザーとクルト・シューマッハー――模範的な愛国者、愛国的な模範? 38
  第3節 一九五二年の「スターリン・ノート」――チャンスを逃した? 48
  第4節 一九五三年六月一七日――統一をめざした暴動? 53
  第5節 SPDへの入党――「理性の勝利」? 60
第4章 ベルリンの壁構築がバールの東方政策・ドイツ政策構想にもった意義 69
第5章 「接近による変化」 79
  第1節 一九六三年のトゥッツィング演説 79
  第2節 東方政策新方針の実際的な現実化 90
  第3節 緊張緩和と再統一 99
第6章 未公刊書の草稿 一九六五/六六年 107
  第1節 ドイツ、さて何をしたらいい?――構想の基本想定 107
  第2節 統一のための段階モデル 116
  第3節 バール草稿への批判について 121
第7章 大連立 129
  第1節 企画立案スタッフ――エーゴン・バール 132
  第2節 企画立案研究 138
     その1 ヨーロッパの安全保障 140
     その2 将来の西ドイツ政府の外交政策 146
     その3 DDRとの大枠条約 152
第8章 東方諸条約の政策 159
  第1節 社民=自由連立――東方政策のための同盟 159
  第2節 モスクワ条約 164
     その1 交渉人エーゴン・バール――「理論家が外交の表舞台へ」 167
     その2 モスクワにおける交渉――内容、目標、戦術 171
     その3 ドイツ統一に関する書簡――モスクワ交渉のテーマとしての「ドイツ問題」 178
  第3節 ベルリンに関する四カ国協定 186
     その1 バール構想におけるベルリンの意義 188
     その2 四カ国協定――緊張緩和構想の結節点? 193
  第4節 基本条約 201
     その1 基本条約――アブノーマルな正常化? 203
     その2 ドイツ・ドイツ間交渉のテーマとしてのドイツの一体性 210
第9章 東方政策の危機? 223
  第1節 安全保障政策――オイフォリーと醒めた意識の間で?―?兵力削減の問題 223
  第2節 試練に晒される東方政策――蜜月期間の終わり? 237
  第3節 モスクワを介して目標に――緊張緩和政策の袋小路? 250
  第4節 シュミットの「現実主義的な緊張緩和政策」――バール構想からの決別? 265
第10章 付論 緊張緩和政策を通じての発展途上国政策 277
第11章 付論 連邦事務局長バール――知的な人選ミス? 285
第12章 共通の安全保障――構想と論争 291
  第1節 中性子爆弾――思考の倒錯? 291
  第2節 NATO二重決議――忠誠と確信とのはざまで 300
  第3節 「共通の安全保障」――軍事的領域における緊張緩和政策の続行 314
  第4節 「ヨーロッパのヨーロッパ化」――緊張緩和は分割できるものか? 327
第13章 分断のなかにチャンスを求めて 343
  第1節 第二次東方政策――社会民主党の影の外交? 343
  第2節 SPD/SED対話――共通性を求めて 354
  第3節 「再統一をいう自己欺瞞」? 369
第14章 二つの平和条約――諦念それとも希望? 377
  第1節 ゴルバチョフに対するバールの反応 377
  第2節 ドイツを思う 389
第15章 統一――夢が現実となる? 401
  第1節 一九八九年――「(歴史・民族・文化的)近さによる変化」 401
  第2節 統一への道――ユートピアから現実問題へ 415
第16章 バールのドイツ構想の中心的観念の総括 429
  第1節 エーゴン・バールと国家・国民(ネーション) 429
  第2節 エーゴン・バールとヨーロッパ 440
  第3節 エーゴン・バールと安全保障 450
第17章 エーゴン・バールの「内なるハシゴ」 459
第18章 結びの考察 479

     訳者あとがき 486
     引用参考文献 016
     人名索引 010
     事項索引 001


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