台湾のなかの日本記憶

戦後の「再会」による新たなイメージの構築

[編者]所澤潤林初梅

終戦以前の台湾における「日本」は、いかにして台湾人の記憶となったのだろうか。記憶は、戦後日本との「再会」によって構築され興味深い展開となったが、その全貌は明かされていない。本書では文学、歌謡、映画、看護婦、家屋、学校に現れたさまざまな「日本」から、そのあり方、変容を探る。

[書評・紹介]
《図書新聞》「2016年上半期読書アンケート」2016年7月23日、選者:安田敏朗氏

定価=本体 3,500円+税
2016年3月25日
A5判上製/308頁/ISBN978-4-88303-400-0


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[目次]


序論 あの頃の台湾──本書を読み進めるために/所澤潤 009

第一章 戦後台湾における日本語と日本イメージ/松永正義 045

第二章 植民地体制下の台湾の民謡──民謡に見る「場所」と「空間」/陳培豊 061
一 はじめに 061
二 日本統治期、「台湾」を情景とする楽曲の出現 062
三 新民謡運動から見た「庶民」と「国民」 072
四 新たな外来政権下の「民謡」 078
五 「場所」の主体化と「空間」のツール化 084
六 結論 095

第三章 歌謡、歌謡曲集、雑誌の流通
──中野忠晴と「日本歌謡学院」の戦後初期台日に対する文化を越えた影響/石計生(田上智宜/訳) 101
一 はじめに 101
二 歴史と歌謡曲伝播の経路?―?中野忠晴、「日本歌謡学院」と台湾 104
三 「愛唱歌時代」―?歌手であり作曲家である中野忠晴の歌謡曲と、台湾人歌手によるカバー 112
四 「日本歌謡学院」の国境を越えた影響 117
五 『週刊明星』、『週刊平凡』と付録歌謡曲集の国境を越えた影響 121
六 結論 124

第四章 台湾における石原裕次郎の影響/四方田犬彦 133
一 芸術映画(A級)とローカル映画(B級) 133
二 一九四五年以降の台湾の映画事情 137
三 日活アクションと石原裕次郎 141
四 台湾で公開された裕次郎映画 144
五 『金門島にかける橋』 145
六 『温泉郷的吉他』 152
七 結語 154

第五章 現代台湾映画における「日本時代」の語り
──『セデック・バレ』・『大稲?』・『KANO』を中心に/赤松美和子 157
一 はじめに?―?「日本時代」を創作源とする現代台湾映画 157
二 『海角七号』以前の「日本時代」表象 160
三 『セデック・バレ』における「日本時代」の語り方 167
四 『大稲?』の語りとノスタルジア 174
五 おわりに?―?現代台湾映画における「日本時代」の語り 181

第六章 台湾女性エリートの意識の形成とその変・不変
──台湾人看護師を例に/蔡尓p(高田友紀/監訳・中村剛福/訳) 191
一 はじめに 191
二 女性の就業背景 194
三 日本統治期における台湾人看護師の育成及びエリート意識の形成 197
四 戦後における看護師のエリート意識の変・不変 206
五 結論 213

第七章 植民地時代の遺構をめぐる価値の生成と「日本」の位相
──台湾における日本式木造家屋群の保存活動を事例として/石井清輝 225
一 はじめに 研究の背景と目的 225
二 自然保護から複合的な「地域性」の保存へ?―?台北市青田街の事例 226
三 「地域資本」としての日本式家屋群―?花蓮市「将軍府」の事例 233
四 「日本」の発見と再定位―?集合的記憶と文化的異質性の観点から 240
五 おわりに 現在の保存活動の争点と今後の研究課題 245

第八章 湾生日本人同窓会とその台湾母校
──日本人引揚者の故郷の念と台湾人の郷土意識が織りなす学校記憶/林初梅 253
一 はじめに 253
二 戦後初期の台湾における日本時代の「記憶の場」? 256
三 戦後日本人の台湾引き揚げと同窓会の結成 262
四 旧台南一中同窓会「南中会」と現在の台南二中 274
五 郷土意識の変容による学校記憶の共有化 281
六 結び 288

あとがき 298


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