聖性の物質性

人類学と美術史の交わるところ

[編]木俣元一佐々木重洋水野千依

物質世界を生きる人間は、異界にある人ならざるものとどう相対してきたのか──
日常世界とは異なる時空に神や霊的存在などがいる/あるとする考え方は人類におおむね共通する。通常の五感では関知しえないそれらの存在との相互交渉における物質性の諸相について、文化人類学と美術史が共同し、民族誌的報告や事例研究をもとに比較検討する。

[書評・紹介]
「図書新聞」2023年3月18日、評者:石倉敏明氏(秋田公立美術大学准教授)
「図書新聞」2022年11月19日、「五感では不可触な領域との接触を、いかに物質のうちに定位するか? 木俣元一・佐々木重洋・水野千依編『聖性の物質性――人類学と美術史の交わるところ』(三元社)を、Alfred Gell,Art and Agency, An Anthropological Theory(Oxford University Press, 1998)ほかと交差させて読む」評者:稲賀繁美氏
『民具マンスリー』第55巻7号(2022年)、「書籍紹介」
『月刊美術』2022年6月、No.561、「ART BOOKS 新刊案内」(サン・アート)
「TOKYO ART BEAT」2022年4月1日、「今月の読みたい本!」

定価=本体 7,000円+税
2022年3月31日/A5判上製/680頁/ISBN 978-4-88303-548-9


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[目次]

序論/木俣 元一  9

第T部 基調論文   33
基調論文1 「物質性」から広がる人類学研究の地平/佐々木重洋  35
基調論文2 生命体と非生命体とのあわい──美術史研究における「物質性」の射程/水野千依  61

第U部 経験・思考・想像力   83
誘惑の美学──イヌイト・アートにみる「生き方としての芸術」の可能性/大村敬一  85
継起する自己/イメージ──ナイル系牧畜社会における牛、紙、神性/橋本栄莉  117
モノを介したアナロジーの思考──オゴテメリとグリオールによる神話の釈義を事例として/中尾世治  141
イメージと規律=訓練──ティム・インゴルド批判/出口顯  166
至聖所のカーテンとストラスブール大聖堂南袖廊──タイポロジーにおける物質性/木俣元一  188

第V部 人格・エージェンシー・生動性   217
夢ないし幻視における像の生動性についての比較美術史的考察/秋山聰  219
長谷寺本尊十一面観音像の秘仏化と開帳/奥健夫  246
ロココ絵画に描かれた彫像の生動性──信仰から愛好の対象へ/杉山奈生子  266
分配される人格/結晶する人格──像の人格化をめぐる文化横断的比較/水野千依  293

第W部 聖性・奇跡・交渉   321
《アルテミス・エフェシア》──偶像に宿る聖性の継承と分与/芳賀京子  323
ネーデルラントにおける奇跡像と奉納像──中世から現代へ/杉山美耶子  348
トリエント公会議以後のフランスにおける聖画像論と美術──「キリストの顔」をめぐって/栗田秀法  375
金沢市真成寺の鬼子母神像/森雅秀  404
バリ・ヒンドゥー教における「異界」との交流──可視化される神と物質性/廣田緑  429

第X部 空間・環境・設え   455
キリスト教礼拝空間における典礼設備の物質性と象徴性/奈良澤由美  457
後期ビザンティンの聖堂における光の演出と聖性──イェラーキ(ギリシャ)の聖ヨアンニス・クリソストモス聖堂
   /樋口諒  485
不可視の神との対話のメディウムとしての祭壇画──ジョヴァンニ・ベッリーニ作《ディレッティ祭壇画》を事例として
   /須網美由紀  510
神秘体験と日本建築──懸造・熊野詣の建築的仕掛け/松ア照明  537

第Y部 儀礼・パフォーマンス・演出   563
〈集まり〉としての憑依──アフロブラジリアン宗教における人間・モノ・憑依霊/古谷嘉章  565
色彩における物質性と聖性──イヴ・クラインの芸術実践における聖別と涜神のあわい/松井裕美  593
神格との相互交渉と物質性──中動態的協働としての「神人和合」/佐々木重洋  627

あとがき  659

人名索引  I
事項索引  IV