ケルト学の現在

[編]日本ケルト学会
[責任編集]梁川英俊森野聡子

〈幻想〉の宝庫というイメージを纏って喧伝される「ケルト」。――それはなぜか。
紀元前五世紀から長大な時間をかけてケルト概念の上に堆積した歴史の塵を払い、〈学〉としてのケルトの魅力を描出する10篇の論攷。

[書評・紹介]
《南海日日新聞》2024年2月21日
《図書新聞》2024年6月8日、評者:山内淳氏

定価=本体 6,600円+税
2024年3月1日A5判上製/544頁/ISBN978-4-88303-586-1


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[目次]

著者紹介PDF

凡例  11

総論 ケルト学の理解のために/梁川英俊  13
  ケルト学とは何か  14
  ケルト諸語の登場  16
  近現代ケルト人  19
  古代ケルト人  20
  なぜ「ケルト」語か  25
  大陸ケルト語と島嶼ケルト語  28
  ケルト人の口承文化の「発見」  34
  ケルト学の進展  38
  ケルト人種論  42
  考古学におけるケルト人  46
  考古学、歴史学、言語学のケルト人は一致するか  49
  ケルト美術  52
  二〇世紀のブリテン考古学  55
  ケルト懐疑論  57
  西か東か中央か  61
  DNAが語るケルト人  63
  ケルト学の現在  66

第1章 古代ケルト人の紛争解決と集会
――古代ケルト人の評議会に関する一試論/疋田隆康  75
  はじめに  76
  ケルトをめぐる議論の背景と問題点  77
  ケルト人の紛争解決  83
  集会と「元老院」  90
  おわりに  96

第2章 アイスランドにおける『ブリタニア列王史』受容の諸相
――歴史とロマンスの狭間で/林 邦彦  99
  はじめに  100
  『ブリトン人のサガ』の二ヴァージョン  102
  『ブリトン人のサガ』と『トロイア人のサガ』  106
  「第二の歴史書版」AM764クォート写本  113
  おわりに  120

第3章 妖精と「ケルト」、そのつながりから見えてくるもの
――ブリテン諸島におけるイメージ交錯の過程/辺見葉子  123
  はじめに  124
  「妖精」という言葉  124
  中世ロマンスの妖精と「ケルト」  130
  妖精研究  138
  妖精と迷信・未開  144
  おわりに  156

第4章 グウェンフランのいたブルターニュ
――「伝説」のバルドが創った「歴史」/梁川英俊  161
  はじめに  162
  グウェンフランの登場  162
  『バルザス=ブレイス』のグウェンフラン  179
  グウェンフランへの疑念  198
  おわりに  213

第5章 ヴィクトリア朝のケルト人はなぜ「黒かった」のか
―― 一九世紀のブリテン諸島におけるケルト人種論の展開/森野聡子  219
  はじめに  220
  黒い猿としてのアイルランド人  220
  すべてはタキトゥスから始まった  224
  「ガエル」と「キムリ」―ケルト人種の二つのタイプ  227
  「我らが祖先イベリア人」  230
  複数の人種・一つのネイション  235
  「島のケルト人」は「黒いケルト人」論をどう受けとめたのか  241
  おわりに  246

第6章 エルネスト・ルナンの「ケルト諸人種の詩歌」について
――ケルト人は「物のあはれ」を知るか/梁川英俊  249
  はじめに  250
  「ケルト諸人種の詩歌」  251
  「南」の発見と「北」の自覚  262
  ルナンの継承者―マシュー・アーノルドとW・B・イェイツ  268
  ケルト人からブルトン人へ  275
  おわりに  282

第7章 マシュー・アーノルドにおける「ケルト的なるもの」の形成とその残影
――『ケルト文学の研究について』(一八六七年)再評価の試み/不破有理  289
  はじめに  290
  マシュー・アーノルドと『ケルト文学の研究について』  291
  エルネスト・ルナンの影響  295
  「ケルトの隣人」の理解と協調のために―その一 比較言語学から  300
  「ケルトの隣人」の理解と協調のために―その二 純血論の否定  304
  アーノルドの論証法への疑義―その一 語源をめぐって  309
  アーノルドの論証法への疑義―その二 「ケルト民族の気質」への反論  311
  アーノルドの講義の反響と批判  315
  アーノルドの講義の影響―グラッドストンへ  322
  アーノルドの講義の影響―ケルト学への貢献と負の遺産  327
  日本における「ケルトの幻想」の伝播  333
  おわりに  ?335

第8章 近代日本における「ケルト」イメージの生成と「日本文学」
――ラフカディオ・ハーンの受容を起点として/鈴木暁世  339
  はじめに  340
  人種と文学―日本におけるラフカディオ・ハーンの評価とケルト  340
  二〇世紀初頭の日本におけるアイルランド文学の受容とケルト像  347
  文学は国民の心理をあらわしているのか―「日本文学史」創出とイポリット・テーヌ  353
  「日本人」に類似した民族としてのケルト―「ケルト人」としての「小泉八雲」像  358
  一九八〇年代の「ケルトブーム」とハーンの再ケルト化  370
  おわりに  377

第9章 新旧ウェールズ語訳聖書に見る継続性と現代性
――『ヨハネによる福音書』の動詞および動詞句構造の比較対照を中心に/小池剛史  381
  はじめに  382
  『ウェールズ語訳聖書』(一九八八年)、標準書き言葉、文章語  383
  『新ウェールズ語訳聖書』の成立背景  386
  現代ウェールズ語の動詞および動詞句構造  392
  BCNにおける動詞句構造―一般的傾向  400
  BCNに見られる文章語の継続性と現代性  410
  おわりに  413

あとがき  417

事項索引  007
人名索引  011
書名索引  021
注  029
参考文献  089
図版出典一覧  121