「負の遺産」との取り組み
オーストリア・東西ドイツの戦後比較

[著者]W・ベルクマンR・エルプA・リヒトブラウ
[訳者]岡田浩平

「ヴァルトハイム事件」(1986年)以後、ようやく批判的な現代史研究が始まったオーストリア。体制崩壊、ドイツ統一後の資料検証によりその実像が明らかになり始めた東ドイツ。これら最新の研究成果から、ドイツ語圏三国の過去処理を比較した戦後史。

定価=本体 7,500円+税
1999年3月30日/A5判上製/480頁/ISBN978-4-88303-052-1



[目次]

序論 オーストリア、東西ドイツにおけるナチズム的な過去との取り組み比較
(ヴェルナー・ベルクマン+ライナー・エルプ+アルベルト・リヒトブラウ) 13

総論 オーストリア、東西ドイツの歴史へのナチズム時代の組み入れ比較(アグネス・ブレーンスドルフ) 21
     第1節 序 21
     第2節 オーストリア 24
     第3節 東ドイツ 33
     第4節 西ドイツ 39

第1部 政党と団体
 第1章 「戦争の灰塵のなかから蘇って」
 ――一九四五年後におけるオーストリア国民党(OVP)のナチズムと反ユダヤ主義との取り組み素描
 (ヴァルター・マノシェク) 48
     第1節 第二共和国の建国神話、あるいはある国民の「責任回避戦略」 48
     第2節 オーストリア国民党とナチズム 50
     第3節 オーストリア国民党とその反ユダヤ主義的遺産 52
     第4節 オーストリア国民党と一九四五年以後の反ユダヤ主義 54
     第5節 オーストリア国民党と亡命者たち 59
     第6節 親ユダヤ的な試走 61
 第2章 ドイツ・キリスト教民主同盟(CDU)とナチズム、ホロコースト
 ――ヒトラーは死んで、ウルブリヒトは生きる(ウーテ・シュミット) 65
     第1節 「重苦しい時代」 65
     第2節 キリスト教同盟二党の構想―ブルジョア政党勢力にみる変化と継続性ライン 67
     第3節 小連立のなかのキリスト教同盟二党―権力の安定と馴致戦術 71
     第4節 ユダヤ人殺戮―テーマとならず 77
     第5節 「見せかけの革命」あるいは「再ナチ化」? 87
     第6節 アデナウアーとユダヤ人 90
     第7節 ヒトラーが死んで、ウルブリヒトが生きる 99
 第3章 「償いは……できるだけ軽いものにしよう」
 ――オーストリア社会民主党(SPO)のナチズムと反ユダヤ主義との取り組み(リヒャルト・ミッテン) 103
 第4章 ドイツ社会民主党や労働組合のナチズム体制やホロコーストとの取り組み(ハインリヒ・ポットホフ) 125
     第1節 労働組合 127
     第2節 ドイツ社会民主党 132
     第3節 むすび 141
 第5章 無批判的な自己描写と外部に対する無条件的断罪
 ――オーストリア自由党(FPO)の文書にみるナチズムという過去、反ユダヤ主義、ホロコースト
 (クルト・リヒャルト・ルター) 144
     第1節 序 144
     第2節 FPO(もしくは『独立者連盟』)の基本綱領にみるナチズムという過去 146
     第3節 他の(準)公式的な文献にみるFPOの歴史像やナチズムという過去 151
     第4節 FPOと、日常政治にみるナチズムという過去 159
     第5節 結論 170
 第6章 ドイツ自由民主党(FDP)にみるナチズム的な過去の処理について(モーニカ・ファスベンダー) 175
 第7章 反ファシズムと愛国主義の間で
 ――オーストリア共産党(KPO)のナチズムと反ユダヤ主義、ホロコーストに関する態度(マルギット・ライター) 185
     第1節 四五年以後のKPOの政治的条件の大枠 185
     第2節 ナチズム、反ユダヤ主義、ホロコーストがKPOにおいてもつ意義 187
     第3節 ナチズムによるユダヤ人犠牲者に対するKPOの態度について 191
     第4節 オーストリアのナチ犯人や消極的同調者に対するKPOの態度 194
     第5節 自分の隊列内の反ユダヤ主義に対するKPOの対応について 197
     第6節 むすび 202
 第八章 社会主義統一党(SED)とナチズムという過去(ロータル・メルテンス) 205
     第1節 まえおき 205
     第2節 損害補償の拒否 210
     第3節 五十年代初期の反ユダヤ主義 212
     第4節 イスラエル国家に対する態度 213
     第5節 西ドイツとの違いの強調 215
     第6節 統一にいたるまでの、反ユダヤ主義やユダヤ人協会に対する態度 216
     第7節 統一後について―スキンヘッドと極右ラジカリズム 218
 第9章 「ユダヤ人ポグロムの恥辱」から「シオニズム的な破壊活動」
 ――西ドイツ共産党(KPD)が認識するユダヤ人迫害と反ユダヤ主義(へディートリヒ・シュターリッツ) 222
 第10章 一九四五年から最近にいたるオーストリア学生組合にみる右翼保守主義、極右主義、ネオナチズム
 (ミヒャエル・ゲーラー) 247
     第1節 まえおき 247
     第2節 一九世紀にみるイデオロギー化と、一九一八年以降の急進化 249
     第3節 一九四五年以後の状況 252
     第4節 むすびの考察 273

第2部 記憶の機構制度化(=記憶を一般に承認された確かな形のものにすること)
 第1章 オーストリアにおける追悼の場所や日の取扱い(ラインホルト・ゲルトナー) 276
     第1節 犠牲者の追悼 277
     第2節 かつての戦友たち 282
     第3節 義務の遂行 288
     第4節 オーストリアにおける戦士記念碑 291
     第5節 オーストリアとスターリングラード 295
 第2章 ソビエト占領地区や東ドイツにおける記念碑政策と「水晶の夜」との取り組みについて
  (オーラフ・グレーラー)  298
     第1節 ソビエト占領地区や東ドイツの記念の場所の構想 299
     第2節 ホロコーストの犠牲者の追悼 306
 第3章 西ドイツにおける追悼の日や記念場所との取り組み(ヴォルフガング・ベンツ) 318
     第1節 追悼の日 319
     第2節 想起の場所 323
     第3節 記念や慰霊の場所 324
     第4節 警告の碑 326
     第5節 資料館 327
     第6節 破壊されたものの復元? 328
     第7節 ナチズムの遺物 332
     第8節 想起の妨害 334

第3部 ユダヤ人団体や組織の役割
 第1章 オーストリアにおけるイスラエル信徒集団の国内政治との関わり(ヘルガ・エムバハー) 340
     第1節 反ユダヤ主義的な世界のなかでの「イスラエル信徒協会」の自己理解 343
     第2節 冷戦と反ユダヤ主義 346
     第3節 反ユダヤ主義対策としての「新ユダヤ人」タイプの構想 348
     第4節 ジーモン・ヴィーゼンタールと「イスラエル信徒協会」 351
     第5節 世代交代と新たな意識 354
     第6節 ヴァルトハイムを巡るジレンマ 356
 第2章 東ドイツの国内政治におけるユダヤ人とユダヤ人信徒教会(ペーター・マーザァ) 361
     第1節 ユダヤ人の運命は社会的状況のインジケーターか? 361
     第2節 四五年以降も「ユダヤ人同胞の迫害と屈辱的な扱い」か? 364
     第3節 スランスキー裁判の東ドイツにおける影響 368
     第4節 八十年代後半にいたるまでのDDRにおけるユダヤ人とユダヤ人協会 373
     第5節 総括386
 第3章 ユダヤ人国際組織と西ドイツのユダヤ人協会の政策(イシャヤウ・イリネック) 389
     第1節 まえがき 389
     第2節 第一の時期―一九四五年〜四九年 393
     第3節 第二の時期―一九四八年〜五一年 398
     第4節 第三の時期―一九五一年〜五三年 404
     第5節 第四の時期―一九五三年〜五四年 410

第4部 知識層の世論と政治的な世論
 第1章 日常、抵抗、ユダヤ人の運命
 ――ソビエト占領地区/初期の東ドイツ文学における第三帝国との取り組みの局面(ディーター・シラー) 414
 第2章 ドイツの新聞報道にみる「ビットブルク事件」
 ――右派/保守的な解釈と左派/リベラル的な解釈(ヴェルナー・ベルクマン) 429
     第1節 序 429
     第2節 「ビットブルク論議」の論争経過 431
     第3節 新聞解説の分析 434
     第4節 「ビットブルク」と西ドイツの過去克服 449

訳者あとがき 452
執筆者紹介 459
原注 469
事項索引 472
人名索引 479


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