[目次]
まえがき 仲 潔・布尾 勝一郎 001
第 1 章 少数言語は 21 世紀を生き残れるのか:スペインの地域言語をめぐる問題から考える 柿原 武史 009
1. はじめに 009
2. 教育における少数言語への批判の高まり 012
2.1. カタルーニャ自治州におけるカタルーニャ語教育政策に対する批判 014
2.1.1. カタルーニャ自治州の言語教育政策 015 / 2.1.2. イマージョン教育への批判 016
2.2 ガリシア自治州におけるガリシア語教育政策に対する批判 019
2.2.1. ガリシア自治州の言語教育政策 019 / 2.2.2. ガリシア語教育の拡大に対する批判と現状 020
3. 少数言語はなぜ叩かれるのか 021
3.1. 国家語を学ぶ権利 022
3.2. 言語的スペイン主義の台頭 024
4. おわりに 027
参考文献 030
参考:スペイン政府とその周辺およびカタルーニャ自治州、ガリシア自治州の言語教育政策に関連するできごと 032
コラム 移民の統合政策と言語政策 柿原 武史 033
第 2 章 多言語社会ルクセンブルクにおける言語イデオロギーの「対抗」 小川 敦
1. はじめに 037
2. 伝統的言語イデオロギーと言語の「対抗」 041
2.1. 複数言語体制の成立と維持 043
2.2. 多言語的意識と単一言語的意識の「対抗」 045
3. 社会の変化とルクセンブルク語使用の増大 050
3.1. 移民の増加と教育制度 052
3.2. ルクセンブルク語の役割の変化と政策 057
3.3. 言語権と「対抗」の軸 060
4. おわりに 062
参考文献 064
コラム 欧州言語共通参照枠( CEFR )と複言語主義 小川 敦 067
第 3 章 台湾における「外国にルーツを持つ人々」のための言語支援:外国籍配偶者と外国籍労働者を中心に 松永 稔也 071
1. はじめに 071
2. 台湾に暮らす外国籍住民 073
3. 外国籍住民への生活支援 077
3.1. 外籍配偶への生活支援 077
3.1.1. 外籍配偶に対する人的支援・空間提供 077 /
3.1.2. 外籍配偶に対するホスト社会の言語習得に関わる支援 080
3.2. 外籍勞工への言語支援 083
3.2.1. 台湾渡航前の言語学習 084 / 3.2.2. 言語支援への需要と台湾側の対応 084
4. ホスト社会の認識の変更へつながる動き 087
4.1. 外籍配偶の主体性の確立に関わる動き 087
4.2. 外籍配偶の母語・母国語の継承・活用の視点 089
4.3. 外籍勞工から学ぶ・外籍勞工と学ぶ 091
5. 結びにかえて 093
参考文献 096
コラム 多言語社会としての台湾 松永 稔也 098
第 4 章 インドネシアの「統一の中の多様性」:言語という枠組みによる集団の諸相 中谷 潤子 101
1. はじめに 101
2. 国語としてのインドネシア語 104
3. 華語 ― 失われた時代を経て 107
4. 地方語の諸相 113
4.1. スンダ語 ― 威信とアイデンティティの象徴として 114
4.2. チア・チア語 ― 政治とアイデンティティの道具として 115
5. 集団を形成する線引きとは ― 言語という枠組み 118
6. おわりに 120
参考文献 121
コラム プラナカンとは誰か 中谷 潤子 124
第 5 章「対抗しない」アフリカ型多言語主義の可能性:タンザニアの言語状況を事例に 沓掛 沙弥香 127
1. はじめに 127
2. アフリカの言語状況 130
2.1. 言語の可算性の問題 130
2.2. 言語の実体化と「母語」という概念 131
2.3. 言語の重層性 ― 「公用語」としての旧宗主国言語の居座り 133
2.4. アフリカにおける言語問題の所在 135
2.5. 後退するアフリカ諸語の「対抗」 136
3. タンザニアにおける「対抗する言語」を考える 138
3.1. シナリオ 1 :「対抗する言語」としてのスワヒリ語 139
3.1.1. スワヒリ語の「国語」化 139 / 3.1.2. 英語に対抗するスワヒリ語という可能性 140 /
3.1.3. 「対抗しない」スワヒリ語振興政策・「対抗しない」人々 144
3.2 シナリオ 2 :民族語による抵抗という可能性 146
3.2.1. 民族語の衰退 146 / 3.2.2. スワヒリ語に「対抗」する民族語? 147
4. 対抗しない言語 ― アフリカ型多言語主義とその可能性 150
4.1. 言語帝国主義かアフリカ型多言語主義か 152
4.2. 社会の変化への回答としてのアフリカ型多言語主義 153
5. おわりに 155
参考文献 157
コラム アフリカにおけるスワヒリ語の特殊な地位 沓掛 沙弥香 164
第 6 章 対抗する言語としてのアイオレオ語:ボリビア・パラグアイ国境線からのまなざし 寺尾 智史 167
1. 「コニョーネとの 400 年間」をめぐって 167
2. 「 レドゥクシオン」という装置の中で ― 西洋との「減算的コンタクトゾーン」 172
3. ポスト・イエズス会のレドゥクシオンとアイオレオ ― 「同化の自動装置」の枠外で 177
4. チャコ戦争とアイオレオ ― 戦線が分断線となる悲哀 180
5. 「 2 つの移動民」の皮肉な出会い ― メノナイトとの不幸な接触 183
6. 「チャコ戦争」戦後とアイオレオ ― 分断の影響 187
7. アイオレオのことばと文化は生き残れるか ― 彼らの、そして我々の問題として 194
参考文献 198
コラム アルピリの栄光と挫折 ― アイオレオの在パラグアイ・ボリビア大使への期待と結末 寺尾 智史 203
第 7 章 日本における日本語教育政策とその課題 布尾 勝一郎 207
1. はじめに 207
2. 首尾一貫した日本語教育政策の不在 208
3. 看護・介護労働者の受け入れにおける日本語教育 211
3.1. 経済連携協定( EPA )に基づく看護師・介護福祉士候補者の受け入れ 211
3.2. 外国人技能実習制度への介護職種追加 214
3.3. 在留資格「特定技能」の創設 216
4. 「日本語教育の推進に関する法律」 220
4.1. 議員連盟 221
4.2. 法案可決までの経緯 224
4.3. 推進法の構成 225
4.4. 推進法の特長 228
4.5. 推進法に欠けている点 230
5. おわりに 232
参考文献 233
コラム 外国人看護・介護労働者が直面する日本語面の困難 布尾 勝一郎 236
第 8 章 英語教授法をめぐる言説に内在する権力性 仲 潔 239
1. はじめに 239
2. 教授法に頼らざるを得ない教師たちの事情 241
2.1. ICT 機器の拡充 242
2.2. ALT の拡充 243
2.3. 教員研修の充実 245
2.4. 窮地に立たされる英語教師 246
3. 教授法の特徴 247
3.1. 教授法の 3 つの次元 247
3.2. 教授法の特徴を明らかにするための視座 249
4. 教授法に内在する言語観とその権力性 252
4.1. 「言語の本質は音声」という言語観 253
4.2. 想定される「母語」/「第 1 言語」とは何か 256
4.3. 構造/機能/相互作用への視点と教師主導型に見る言語観・言語教育観の変遷 260
5. 二人称的な「かかわることば」の教育へ 264
5.1. かかわることば、かかわらない言葉 265
5.2. かかわることば、かかわらない言葉と教授法 267
6. おわりに ― 教授法への無批判な信仰からの解放 268
参考文献 269
コラム 国際語としての英語と国際英語 仲 潔 273
第 9 章 対抗するための言葉としての「コミュニケーション」:英語教育の現場から 榎本 剛士 275
1. はじめに 275
2. 「英語教育」と「コミュニケーション」 278
3. 「コミュニケーション」という言葉を「対抗」するための言葉として再生するための知見 283
3.1. 言語人類学の知見 284
3.2. (批判的)応用言語学の知見 286
3.3. 多文化主義(批判)の知見 287
4. 「対抗」するための言葉としての「コミュニケーション」を通じて教室の可能性を捉え直す 291
4.1. 「海外の人」よりも「今・ここにいる人」 291
4.2. 「考える市民」の言葉としての「コミュニケーション」へ 294
5. おわりに 296
参考文献 297
コラム メタ語用と言語政策 榎本 剛士 300
第 10 章 言語的弱者への見えにくい排外主義と対抗理論:障害者を中心に、外国人・非識字者も視野に入れて 中島 武史 303
1. はじめに 303
2. 言語による差別 305
3. 日本社会に見られる他言語話者に対する排除 306
3.1. ろう者について 307
3.2. 外国籍・外国にルーツのある人たちについて 308
4. 日本語を使用する人たちの間での排除 309
4.1. コミュニケーション形態の不一致による排除について 309
4.2. 日本語そのものが障壁となり起こる排除について 310
5. 言語的弱者への排外主義に対抗するために 312
5.1. 言語権、障害学的言語権という考え方 312
5.2. 言語やことばの問題を社会的責任として捉える考え方 314
5.3. ことば・情報のユニバーサルデザイン 315
5.4. アンエンパワメントとユニバーサルデザインの関係 317
6. 対抗理論の実践からわかること 318
6.1. ことば・情報のユニバーサルデザインと「合理的配慮」の親和性 319
6.2. 日本語・日本語表記の難しさを低減する取り組みの共通点 320
6.3. 人のネットワーク、視覚的記号の活用による対抗 324
7. 対抗を阻害する要因 327
7.1. 単一性を指向する言語規範の問題 327
7.2. 言語現象の個人モデルを自明とする、強者の論理という問題 328
8. おわりに 329
参考文献 331
コラム 視覚言語・視覚的コミュニケーションの世界 中島 武史 335
第 11 章 怒りの隠蔽:聞き手に怒りをもたらす言語機能について 山下 仁 339
1. はじめに 339
2. ヘイトスピーチ 342
3. 構造化された暴力とことばの暴力 346
4. 聞き手に怒りをもたらす言語表現の具体例 351
4.1. 中間的な領域におけるあからさまな表現 352
4.2. 中間的な領域における間接的な表現 353
4.3. 政治的領域におけるあからさまな表現 355
4.4. 政治的領域における間接的な表現 357
4.4.1. 「女性活躍加速のための重点方針」について 357 / 4.4.2. 「外国人高度人材」について 361
5. まとめ 363
参考文献 364
コラム ウルリヒ・アモンと日本の言語政策 山下 仁 366
あとがき 柿原 武史 370
執筆者紹介 374 |