二つの時代を生きた台湾

言語・文化の相克と日本の残照

[編著]林初梅所澤潤石井清輝

台湾人にとっての「日本」とは
日本とは異なる「戦後」を歩んだ台湾。日本時代に生まれ育った台湾人は、日本人が去ったあと、どのような社会を、どのように生きたのか? 二つの時代を生きた台湾人の経験に迫る。

定価=本体 3,800円+税
2021年12月25日A5判上製/312頁/ISBN978-4-88303-541-0


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[目次]

本書を読むために
台湾の中の日本語世界/所澤潤  x
多元社会台湾の歴史的積層/石井清輝  xxi

第I部 経済統制下の台湾
  第1章 戦時体制下台湾の「デパート」―全体主義と個人の軋轢/李衣雲(所澤潤 訳)  002
     はじめに  002
     一 象徴記号の意味と台湾戦前のデパート文化  003
     二 戦時下における消費と全体主義の勃興  008
     三 「戦後」における戦争体制とデパート―台北を例に  015
     まとめ  027

  第2章 戦後台湾女性のよそおい文化―社会現象としての日本嗜好/王耀徳+林容慧(阿部由理香 訳)  043
     はじめに  043
     一 戦前期台湾のよそおい文化  046
     二 戦後期台湾のよそおい文化  051
     三 日本風よそおい文化の再登場―台湾資生堂を例として  058
     四 特殊ルートに見られる日本嗜好の受容  065
     おわりに  072

第II部 高等教育制度の転換をめぐって
  第3章 台北高等学校の戦後―日本が過去になった時に起こったこと/所澤潤  084
     はじめに  084
     一 台北高級中学沿革概要  087
     二 中華民国制度への転換の体験  088
     三 失われたものの再評価  115
     終わりに  118

  第4章 台北帝国大学の接収と延平学院の設立―省籍問題を伴う台湾本省人の対日感情の変化
  /林初梅  125
     はじめに  125
     一 国民党政府の接収した学校の戦後の様相  128
     二 台北帝大から国立台湾大学へ  131
     三 私立延平学院の創設に転じた本省人  139
     四 本省人の対日感情の変化  143
     終わりに  148

第III部 文筆家・作家としての人生を読む
  第5章 黄得時による日本文化ならびに日本語に対する戦後の態度
  /Thilo Diefenbach (蒋永学)(中村加代子 訳)  158
     はじめに  158
     一 一九四五年以前―日本文化に対する肯定的な態度  160
     二 戦争と皇民化を明確に支持  162
     三 日本に対する幾度かの批評  163
     四 戦後―日本に対する黄得時の二面性  164
     五 日本文化に対する深い関心  165
     六 日治時期を強烈に批判し、台湾人の抗日精神を指摘  166
     七 日治時期に対する誤った描写  168
     結論  169

  第6章 植民地の記憶―鍾理和「原郷人」の広がり/今泉秀人  175
     はじめに  175
     一  「私はこうして創作を学んだ」(一九五九)  176
     二  「原郷人」(一九五九)  182
     三 渡満から帰台まで(一九三八 ― 一九四六)  186
     四  『文友通訊』(一九五七 ― 一九五八)  190
     五 理和の死後(一九六〇 ― 一九八〇)  196
     むすび  199

第IV部 日本社会における台湾の位相
  第7章 華僑から「台湾人」へ― 一九六〇 ― 七〇年代在日台湾人の歴史的自己省察の試み
  /岡野翔太(葉翔太)  206
     はじめに  206
     一 東アジア地域秩序の再編と在日台湾人  211
     二 在日台湾人の連帯を目指して―台湾人権利擁護総連合会の試み  216
     三  台湾人権利擁護総連合会と台湾協会の連動―「戦没台湾人合同慰霊祭」の実施  221
     四 在日台湾人をめぐる語りの構築過程  227
     おわりに  230

  第8章 植民地同窓会における戦後日本の台湾記憶―台北市・樺山小学校の事例から/石井清輝  240
     はじめに―問題の所在と本論文の課題  240
     一 対象の概要と分析方法  242
     二 同窓会の目的と活動内容  244
     三 台湾に関する記憶の多様性と「他者」の記憶  245
     四 集合的に強化される「ノスタルジアの語り」  249
     五 新たな台湾認識を獲得する場としての同窓会  256
     おわりに  260

あとがき  林初梅  270
執筆者紹介  276


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